恋を知らない花~初恋~
その日からは思うように仕事があまり手に付かなかった。
それでもメインで担当する会社もなくなりそんなに根を詰めてする仕事もなく、2週間もすればほとんどが担当していた会社に新しい担当の人と同行することもなくなった。

だからと言ってすることがないわけではない。学生に戻ったみたいに新人教育の資料を読んだり、自分で色々勉強し、レポートを人事部の横山課長に提出したり、やり直しさせられたりで忙しかった。

私生活も健全になり、お誘いを断っていたら誰からも誘われなくなった。
ただひとり、拓也だけはあれからよくご飯に誘われるようになり時間が合えば一緒にご飯を食べた。
本当にご飯だけで、私がお酒も控えてるのも気づいてるみたいでお酒を勧められることもなく家に送り届けてくれる。

拓也と過ごす時間は楽しく、色んな事を忘れられた。
でも拓也はどうして私を誘うんだろう?
今まではご飯の延長線上にセックスがあったのに、ただご飯を食べるだけって…

真中さんと最後に会ったあの日からひと月が過ぎる頃、村田課長から呼び出された。

「川井、実はな、○×印刷の城戸さんからの誘いなんだが…」

いつになく村田課長がごにょごにょと気まずそうに話していた。

「城戸課長がどうされたんですか?」

「いや、それが、青木とさっき○×印刷に行ったら城戸さんに捕まってまた誘われたんだ…その、飲みに…城戸さんは何も知らないから、その、お前も一緒にって言ってるんだ…それで、真中さんも一緒なんだ。」
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