ボードウォークの恋人たち
でも、そんな関係もそう長くは続かず、徐々に姿を変えていく。

そのハル君は高校生になった辺りから街で女の子を連れた姿を見かけるようになっていた。
芸能事務所にスカウトされる位のイケメンハル君は彼にお似合いの見た目が可愛い女の子を連れていた。ただ、いつも同じ子というわけではなかった。

いつの間にかお兄ちゃんではなく異性として意識していた私は彼の隣に女の子がいる姿を見るのが嫌だった。ハル君が初恋だったし。

女の子と一緒にいるハル君を見つけると気持ちが塞いでしまう。小学生と言ってももうすぐ中学生になろうとしていた時期で思春期に入っていた。

もともと下校中に駅前通りでハル君と出会うことがあった。いつもなら彼の姿を見つけると嬉しくて駆け寄っていたけれど、女の子連れの今は違う。

私はそんなハル君に見つからないように隠れるのだけど、なぜかいつも見つかった。

「水音」

私を見つけるとハル君が私を呼ぶ。
すると隣にいる女の子は判で押したように決まって嫌な顔をする。

「だあれ、この子」

「暁人の妹だよ」

そうハル君が言うと必ず「へぇ。可愛いわね」とどの女の子も言った。
みんな目は笑ってない。けど私のことを可愛いと言う。わかりやすくクチだけ。

「水音、週末泊まりに行くっておばさんに伝えておいて」

「うん」
私が頷くのとハル君の隣にいる女の子が「ええっ、嘘でしょ。土曜の夜に一緒にいられないの」と文句を言うのは同時だった。

女の子はハル君の腕に両腕を絡めてしなを作り始めた。
「ね、治臣、だったら今夜は遅くまで一緒にいてよぉ」

「やめろよ、水音の前で」

「いいじゃない。こんな子どもにはなんの話かなんてわからないわよ」
女の子の顔に媚びるようなイヤらしさが浮かぶ。

「水音、もう帰れ。気を付けろよ、真っすぐ帰るんだぞ」

慌てた様子でハル君が女の子を腕にぶら下げて私から離れていく。
そうして私を追い払うことに成功したハル君にしがみつく女の子は私に意地の悪い微笑みを口元に浮かべ早くお家に帰れとばかりに手を振るのだ。

同じようなことが何度か繰り返され、小学生の私に理解できなかった女の子の言葉がはっきりと理解出来るようになったのは、私が中学生になってからだった。


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