ボードウォークの恋人たち
相変わらず毎回違う女の子を連れていたハル君は大学生になっても中学生になった私に出会うと必ず声をかけてくる。
会いたくないのに会ってしまうのは同じ駅を使っているから。

「水音」
いつものようにハル君が私に気が付いた。
今日隣にいる女はハル君と同じ20才くらいだろうか。美人だけど派手なメイクなひとだなと思った。

「今度の週末泊まるっておばさんに伝えておいて」

私が黙って頷いたのを見た女はムッとした。

「えー、やだ。週末は私とずっと一緒にいてよ。どうしていつも泊まってくれないの。こんなお子ちゃまに興味があるなんて知らなかったわ。大きな胸が好きだって言ったじゃない」

お子様体型の私に向かい小バカにしたような視線を向けてきた化粧臭いけばけばしい女は、隣にいるモデルのような容姿のハル君の腕に胸を押し付けるようにしてしなだれかかった。
私、今何を見せられてるんだろう。

「こいつは暁人の妹だよ。君がやきもきやく必要ないだろ」

胸を押し付けられているハル君はふっと笑いながら脳ミソよりも大きな胸をお持ちの女の頭をぽんぽんとした。

それを見た私の身体の中に嫌悪感が走った。

あの仕草は私もしてもらっていた。
「今回の数学のテストも頑張ったね」
「短距離走のタイムが上がったね」
「制服が似合うようになったね」
そう言って頭をぽんぽんとしてくれたハル君。
全く同じ仕草。

ゾゾゾッと虫が身体を這いあがってくるようなイヤな感覚と寒気が身体を襲う。
…気持ち悪い。

その女とハル君が夜何をしているのかなんてもう想像できない子供じゃない。
やだ、ムリ…吐きそう。

「ハル、週末はこの人のところに行けば。お母さんには伝えない。じゃあね、サヨナラ」

私は吐き捨てるように言って駆け出した。


私の治臣の呼び名の「ハル君」が「ハル」に変わったのはその時からそんな理由だった。

”くん”付けはいらない、節操のない女たらしのハルのことを心底軽蔑した。

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