ボードウォークの恋人たち
食後に掃除洗濯を済ませ、軽くメイクをしてからお財布とスマホとエコバッグを持ってマンションを出た。

今からこの付近の探索を兼ねた散歩をしながらお買い物の予定。

出る前にスマホの地図アプリで予習をしておいたから地理は何となくわかる。
マンションの敷地を出てすぐの大通りを進むと川沿いの遊歩道。
そのまま真っ直ぐ歩いていくと高級ブランドのお店が建ち並ぶおしゃれな通りに。
途中にある狭い道に入るとスーパーや日常生活用品も購入できる店が建ち並ぶ商店街に繋がっている。

ボードウォークの遊歩道。時々みしりと木の軋む音と足裏に感じるコンクリートブロックにはない板の弾力に気分が高揚してくる。
川沿いの遊歩道をぶらぶらと歩きながら深呼吸をすると、見慣れない景色に現実感も薄れていく。

就職してから住んでいたのはもっと下町っぽい景色の町でこんなおしゃれなボードウォークなどないしもちろん近所に高級ブランドのショップなどないところだった。

まるで旅行にでも来ているみたい。
このボードウォークから見える景色は海外の街並みのようで、背景と化してるあのタワーマンションの豪華な造りが更に現実を感じられなくなっている理由の一端になっているのだろうと思う。

私の実家は裕福な家庭だけれど、母が派手な生活を好まなかったため特別豪勢な暮らしをしていたわけではない。もちろん貧しい暮らしはしていなかったのだからかなり恵まれていたわけだけれど。

家は来客も多かったから少し大きかったけれど、24時間のジェットバスが付いているわけでも大理石の床があったわけでもないし、もちろんクリスタルのシャンデリアなどもない。今考えて見ると母のセンスで選ばれた落ち着いた趣味の良いインテリアだったのだ。
嫌味なく質の良いもので整えられていたのだなと今ではよくわかる。
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