ボードウォークの恋人たち
ハルの作ってくれたカクテルに私はご満悦だった。

「うーん、これおいっしいっ~」

「これで最後だよって言ったのに」

「だってハルの作ったカクテル美味しくてっ、他のも飲みたくなっちゃうんだもん。ハルだって結構飲んでるでしょ」

「だって水音の作る料理がうまいから。俺もつい飲みすぎるだろー」

「あははは。ハルって相変わらず褒めるの上手っ」

今夜は二人とも上機嫌になっていた。
前に一緒に飲んだ時はダイニングテーブルでお行儀よく飲んだのに、今夜は夕食後にリビングに移動しカーペットに直座りして飲み始め、もう何杯目になったことか。

夕飯後にちょっと飲もうかという話になり既に胃袋は満たされていておつまみはたいしたものは作っていない。

ハルのお土産の明太子は夕飯の時に切干大根と合わせてマヨサラダにして食べた。そのまま食べたものももちろん美味。

だからお酒のお供は胚芽クラッカーに明太子とクリームチーズをのせたものと焼きシシャモ。
焼きししゃもはハルの好物なのだ。

「美味い。さすが水音」
「簡単なものしか作ってないのにぃー」けらけらっと笑うとハルが私の頬を撫でた。

「簡単じゃないよ。水音は簡単だって言うけど、違う。短時間で出来るって言っても他人のために作るって自分の時間を他人に与えて作ってるんだから。全然簡単なことじゃない」

「自分も食べるからハルだけのためじゃないし」
なぜか寂しげに笑うハルにちょっとキュンとしてしまう。

「水音、また作ってくれるか」

「いいよ。こんなのでよかったら」

ぐっと親指を立てるとハルは嬉しそうに目を細める。

ーーーー目を細めて…そして…
ーーーー寝た。

寝た。ハルったら。

ハルはカーペットに座り込みソファーにもたれるようにしていきなりストンっと眠りに落ちた。
すーすーと寝息をたてて眠るハル。
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