ボードウォークの恋人たち
眠っているハルを見ると、起きている時より若く見える。・・・私がハルを避けていた昔のことを思い出してしまう。

あの頃のハルにはよく隣に女の人がいた。今はどうなんだろう。
ここに誰かが出入りすることはないし、病院で女性との噂はきかない。偽りだけど私がハルの婚約者という噂が独り歩きしているからかもしれない。

うっすらと目の下にくまのようなものが見える。
疲れているんだよね。

ハルはうちの病院の常勤医ではなく週に3日間働き、他の日は二ノ宮総合病院と大学病院に行くという変則的な働き方をしている。

二ノ宮総合病院では当直をしているし、大学では診療だけじゃなくて研究もしているらしい。かなり忙しい毎日を過ごしている。

疲れていて当たり前だよね。
私と同居をはじめてから休日らしき休日をとっていないし、当直明けも通常勤務しているし。

少しだけ寝かせてあげようとブランケットをかけようとそっとハルに近付いた。

すーすーという寝息が静かになりハルが何かを呟いた。
寝言?
ハルの口が小さく動いている。

何を言っているんだろうと顔を寄せると「みお…」
私の名前のようで身体が固まった。

ハルの眉間にしわが寄る。
「ごめん、・・・待ってて…」

それきりハルの寝言は収まり、再びリビングにはハルの寝息だけが響いている。

ハルは何を謝っていたんだろう。
私は何を待てばいいのーーー?

私の中にモヤモヤが広がっていく。
やっぱりハルは私に何か隠している?


< 82 / 189 >

この作品をシェア

pagetop