完璧御曹司の優しい結婚事情
「でも、大好きな太郎君に対して、その時に思いついた自分にできることは全てしたんです。思いついたことを精一杯できたんだから、よしとします。でなきゃ、心が苦しくなっちゃいますから。せっかく出会った仲なんですから、悲しむだけじゃなくて、楽しい思い出を大切にしないと、太郎君に叱られちゃいますね」

涙がこぼれないように、必死に話していた。課長がわずかに目を見開いていたけれど、この時の私は気付いていなかった。

「ほんの少しでも、太郎君が嬉しいとか、ありがとうって思ってくれたなら、それでいいんです。……って、なんか自己満足の上に、お礼を強要するみたいになってますけど……」

「……そういう考え方もあるんだね。話を聞かせてもらって、僕の方が救われた気がする」

「えっ?」

救われたって、なんのことだろう?

「聞かせてくれて、ありがとう」

課長の穏やかな微笑みに、いろいろと疑問を感じつつも、聞き返すことはできなかった。


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