冷酷姫に溺れて。

「そろそろお風呂沸いたと思うから入ってきなよ」

「そう、だね。そうする…」

私は逃げるように脱衣所に行った。

さっき案内してもらってよかった。

はぁ。

お風呂の中でも考えてしまうのは入井くんの事ばかり。

なんでこんなにドキドキするんだろう。

胸に手を当てると、よく分かる。

髪の毛にキスされた…。

先輩は今日以外、自分からキスしてくれなかったもんな。

いつも私からしてた。

今思えばすごく変だった。

なんで早く気づかなかったんだろう。




「お先失礼します」

「あ、うん」

入井くんが目を合わせてくれない。

何でだろう?

「入井くん?」

「し、霜月さん……何?」

「どうかしたの?」

「あと、えっと、その……。
霜月さんが可愛すぎて直視できないだけだから心配しないで!!」

え、えーと。

すごいこと言われたような気がする。

「って、キモいよね。ごめん」

「ううん。嬉しい。ありがとう」

「いや、あの。……どういたしましてっ」

入井くんは足早にリビングを出ていった。

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