爽やか王子の裏側は



「園川くーん?」


釘付けだった意識がふと戻った


前の席の女子が振り向いていた


「な、なに?」


「珍しくぼうっとしてたから何してんのかなーって思ったの」


あ、そう


「お、真一何考えてた?スケベなこと?」


「えー何何?」


その女子の声をきっかけに周りの奴らが集まってくる


あーーー


くそ

集まってくんなって


隣に椅子を持ってきたガタイのいい野球部


そいつの影に隠れて西村は完全に見えなくなった


「なー暇だしなんかしようぜ」


やだよだりぃな


「いいねー!」


はぁぁ


「恋バナしよ!」


「私園川くんの恋事情聞きたいー!」


特にないよそんなの


「しっかり聞いたことなかったけど彼女いるの?」


「いないよ」


「本当に?」


なんで嘘つくんだよ


「えー絶対いると思った」


たまにそうやって言う奴いるけどその根拠はなんなの?


「じゃー好きな人は?」


……


「…いないよ」


「えーなんか今ためらったよね!」





「いるのか?真一やるなぁ」


は、いやいねぇつってんだろ


「えー!ショックぅぅ」


「誰誰誰?」


だーかーらー!


「いないよそんな人」


ピクつく口元を無理やり上げて笑う


「えーうそぉ」


本当うざいってなんとかしてよだれか



地獄のような自習時間だった

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