ニナの白歴史
それを聞いて、ニナは薄く笑みを浮かべて頷いた。

「うん、分かってる……分かっていても、私にはこうすることしか出来なかった」

「ごめんね……僕の身勝手でニナにこんな思いをさせて、こんな形で終わらせることしか出来なくて」

「平気だよ。結局は私も想太自身。マナも私も、悪魔でもなければ天使でもない」



その時、ニナの全身に更に激しく亀裂が走った、

今にも崩れ落ちそうになる中、ニナはクリスタルの様に透き通った唇を動かして最後の言の葉を告げた。

「私を生んでくれてありがとう。そしてさようなら……私の唯一のお友達」



バリンッ!

そしてニナはまるで最初から存在しなかったかのように……いや、文字通り『存在しないもの』として僕の腕の中から跡形もなく砕け散った。



僕はゆっくりと立ち上がると、ずっと静観していたマナを見て頷く。

「本当にこれで良かったのカイ?」



マナが黒板を振り返り、嘆息しながら尋ねる。

「確かにこれがオレの役割だった。でも本当の意味で全てを決めたのはキミ自身だ。そうだよネ?」

「ああ分かってる。僕はいずれこうしなきゃいけなかった。その責任をマナに押し付ける気なんてない……僕は僕を背負って生きていく、それだけさ」



それを聞いて、マナは一瞬安心したように顔を弛緩させると――パチンと一度指を鳴らした。

視界が暗くなり意識が反転していく中、最後にマナの声が遠くから響いた気がした。



「せいぜい頑張れヨ……オレの新しいご主人様」



目が覚めると、僕は真っ暗な教室の机に突っ伏していた。

慌てて起き上がると、さっきまで描いていた僕とニナの絵がうっすらと見える。

僕は教室で一人、その絵をしばらく見つめていた後――グシャグシャに丸めてからリュックに押し込んだ。

片づけを終えて最後に一度だけ教室を振り返り、学校を出て帰宅の途に着く。



もう僕にはあの絵は必要ない。

なぜなら――大切なモノはきっと、いつも『ここ』にあるのだから。
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