【短編】卑屈姫の神隠し
 私の人生、ツイてない。
トボトボとバイト帰りの道を歩きながら、溜息をつく。
リツカの働くチェーンのコーヒーショップはてんてこまいの1日だった。

今日は散々な日だった。
店長に買い出しを頼まれたから出勤時間が遅れたのに、店長が引き継ぎをせずに退勤したせいで人の話を聞かない副店長に叱られた。

クレーマーには目をつけられて顔がムカつくという理由で30分以上拘束され、誰も助けに来てはくれなかった。

副店長を呼ぼうとするもお前に話があると離してくれず、挙げ句の果てに胸を鷲掴みにされた。

バイト仲間には明らかなカーストがあり、発言力の強いボスは喋ることと、同僚の男子と顔が良い男性客の気をひこうと精一杯で、誰もがリツカの不幸を見てみぬふりをした。

あと1ヶ月で辞めることが決まっているものの、胸糞悪い職場である。

何でこんな所で働いてるんだろ。
まあどうせ私がどこで働こうと何も変わらないんだろうけど、今の職場はクソすぎるでしょ。

石畳の上で地団駄を踏みたい気持ちを噛み締めながら、トボトボ歩く。

考えてみれば、自分の人生など不幸しかなかったように思う。

リツカは薄い笑みを口元に浮かべた。

三姉妹の次女に生まれ、優秀な姉と朗らかな妹の間で育った平凡な自分。

運動神経は良くないし、頭も姉ほど良くないし、気立てだってひねくれている。

小学校でいじめられたことから人前で話すのは苦手だし、人に接するのが怖くて習い事は続かなかった。 

中学校で入ったテニス部では、ラケットの色が赤だというだけで仲間はずれにされ、高校でやっとできた友達とはリツカ自身の浪人で疎遠になった。

1年のブランクは大きかったらしく、リツカの知らない話がいっぱいで疲弊してしまったのだ。

大学の友達とは上手くやっているが、少し違うように思う。

―――要は。
ずっと友達でいる価値が、私にはないのよ。

そう思うほどには、リツカの心は荒んでいた。
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