【短編】卑屈姫の神隠し
 少し気分を上げようと空を見上げた。
薄く色づいたオレンジ色の空に、ぽつんと異様に赤い雲が浮かんでいる。

「…何、あの不気味なの」

訝しげに眉を寄せた瞬間―――足元に、穴が開いた。

ジェットコースターに乗っているときの、ヒュッと重力を実感するあの感覚。

思わぬ恐怖に声を上げることもなく、リツカは意識を手放した。


―――赤。

血のようなその色が、妙に焼き付いていた。
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