年上同期の独占愛~ずっと側に
気分転換
一時のバタバタより仕事がかなり落ち着いてきたころから、私は一人で飲みに行くようになった。元々グラスに一杯も飲めないから大して楽しめないのだが、それでも飲めば少しだけ気も大きくなり、頭がふわふわしていい気分になる。その時だけだが嫌なことは忘れられる。一人で入っても平気そうなお店を調べてあちこち行っていたのだが、最近はお店も固定してきて、3軒のBarを混み具合によって使い分けている。

午前中の会議が長引き13時半を過ぎてやっと席に戻ってきた日、確か社食は14時までやっていたはず、と原さんと2人で行くことにした。

林君と別れてからずっと社食には行っていないが、この時間だし、原さんと一緒だから大丈夫だろう、と2人で急いで行くことにする。

社食につくなり、原さんはご自宅から電話が入り、聞こえてしまうのも悪いな、思い、1席空けて座る。なかなか電話が終わらないらしく、受話器を耳に当てながらもぐもぐと食べているのを眺めていると、橋本さんが、お疲れ様、と私の前に着席した。

「随分遅いね。打ち合わせ?」

「はい。さっき終わりました。橋本さんこそ、遅いですね。」

「うん。現場行ってて。」

「トラブルですか?」

「うん。でももう解決した。」

それは良かったです。と相槌を打つと、橋本さんがじっと私の顔を見つめている。

「野崎さん、最近雰囲気変わったよね。」

「・・・そうでしょうか。少しだけ痩せたかもしれません。」

「少しほっそりしたのもあるけど、そういうんじゃなくて、何となく精悍な感じというか、逞しくなったというか・・・」

男らしいってことだろうか?それって褒められてはいないよな・・・と思うと、クスリと笑ってしまった。

「ふふっ。女らしさが最近足りないですかね。」

「あー、そうそう。そうやって笑った顔も久しぶりに見た気がする。
・・・最近、何かあった?仕事も随分追い込んでるみたいだけど、何か困りごと?」

「いいえ。困ってはないです。仕事頑張りたいだけです。」

「十分頑張ってるじゃんか。いつも帰るのも遅いし。」

仕事以外、他にすることがないのだ。どうせやるなら、認められたいし成果を出したい。そうすると必然的に長い時間仕事をすることになってしまっているだけだ。

「そんなことないですよ。最近飲みに行ったりしてますし。」

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