年上同期の独占愛~ずっと側に
電車から降りると、じゃあね、とすぐに走って逃げる。いつもなら送る、と言ってついてくる亮も、今日はついてこない。少し走ってから振り向くと、亮が自宅の方へ向かっているのが見える。私は踵を返して小走りで亮の方へ向かうと、誰かに電話をかけている姿が見える。後ろに近づくと、会社に携帯忘れたから、とかボソボソと話している声が聞こえた。話を聞こうと更に近づこうとすると、亮がサッと私の方を向き、少しのけぞると、そのまま電話を切った。
「どうした?」
「どうしたじゃないよ。誰に電話してたの?」
「・・・ベンダさんだよ。」
「こんな時間に?もう11時半だよ。非常識だよね」
「・・・明日の朝一で、現場で待合せしてるんだよ」
「・・・もう、さ。いい加減にしてよ。根岸さんでしょ?」
「・・・お前こそ、いい加減にしろよ。その人は関係ないって言ってるだろ!」
「私と別れたいの?」
「・・・・・」
「結婚したいの?」
「・・・・うん」
「じゃあ、何でこんなことばっかりしてるの?」
「・・・・・」
「家も、建て直すんだよ。結婚式場だって仮予約してるんだよ。どうするのよ」
「だから結婚するって」
「私は他に付き合っている人がいる人とは結婚したくない。」
「だから何もないって」
「嘘つき!」
もう夜中だ。いつもまでも外で話しているわけにはいかない。私が歩き出しても、亮はその場に立ったままだ。
「何してるの?帰らないの?」
「帰るよ。」
そう言って亮は自分の家の方向へ歩き出す。
「ちょっと待ってよ。送ってくれないの?」
「・・・・・」
今までだったらこんなこと私が言わなくても送ってくれた。スマホを私が持っていて根岸さんからかかってくると困るので早く根岸さんのところに行きたいのだろう。
「送ってってほしい」
と私が言うと、はあー、と大きなため息をついて、っとに何なんだよ、と大きい声で言いながら、私を通り過ぎ自宅の方へ歩いていく。
その様子を見て、もうこの人は私に愛がないんだな、と、分かってしまった。
「送ってくれてありがとね。これ」
家の前で、『会社用』のスマホを亮に返すと、明らかにほっとした様子で
「いや。もう遅いから早く寝ろよ」
いつもの優しい調子で言ってきた。
はあー、どうしようかな。近いうちに両親に相談し、別れる方向で話をすすめなくてはならないだろう。