裏切り

千亜季と翼side


「翼、早く行こうよ。」
「はいはい。
でも、どうして優なの?」
「訊きたい事あるの。」
「訊きたいこと?
   俺に訊けばいいだろう······」
「いいから。」
と、千亜季に手を繋がれて
引っ張られる

その姿が、可愛くて
嬉しくて、頬が緩むのがわかる

だが····千亜季が優に
会いたがるのが嫌だった。

本当に今までと
まったく違う。

千亜季が俺以外に興味を持つのも
気にするのも嫌だった。
重いよな·····はぁっ······

そんな俺を
「クスクスっ、もう翼は。
何度も言ってるけど
私が大好きなのも
愛してやまないのも
翼だけだよ。」
と、頬にチュッとされて
そんな千亜季を抱き締めて
ふか~く、深くキスをすると
ほわぁんとした顔をする千亜季に
「このまま、ベッドに戻ろうか?」
と、言うと
一旦、頷きかけたが
首をフリフリ
「だ~め、行くの」
と、言うから
千亜季に甘い俺は、
千亜季の言う通りに出掛けた。

「いらっしゃ~い、千亜季ちゃんに翼」
「優さん、来たよ。」
俺達は、カウンターに座り
ビールを注文して
優さんが作ってくれる料理を
食べながら
「優さん、で、あれ?」
「ああ、はい、これ。」
と、優さんが紙を手渡してくれた。

それを見ていると
翼も一緒に覗いてきて
私の顔を見て、優さんを見て
嬉しそうに笑ってくれた。

そう、その紙には
父・昌樹の今の夢や
もらったら嬉しいかな
と、言うものが書かれていた。

「だって、翼が訊ねても
お父様、気をつかうな
と、言うだけでしょ。
だから、優さんにそれとなしに
聞いてもらったの。
優さんのお母さんにも
お願いして。」
「千亜季、優、ありがとうな。」
と、言うと千亜季は微笑んで
優は、
「千亜季ちゃんの頼みだからな。」
と、嬉しそうにしていた。

初めて、千亜季を優の店に
連れて行った時
大変だった。
優が千亜季に惚れて。

だが、千亜季が
「ありがとうございます。
私みたいのを気にしてくれて。
でも、私は翼さんでないと
ダメなんです。
翼さんだから、もう一度
恋をしても良いと思えたのです。」
と、言ってくれて
優は、失恋したが
千亜季をとても気に入ってくれて
まして、奥菜先生の姪だとわかり
余計に飲みにきてね
と、騒いでいた。

飾らない、誰にでも優しい
千亜季は、みんなを引きこむ力が
ある。
それは、嬉しかったり
心配だったりする。
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