裏切り
20章・・偶然に・・

進藤夫婦


昨年、翼との間に男の子が生まれた。

母とお義父さんの喜び様は
ひとしおで、孫に合いに来たり、
電話がきたりと
おかしくて笑いがでる

こんなに喜んで貰えるなら
もう少し早くに生んでも良かったのかな
と、翼とよく話している。

翼は、相変わらず
私を溺愛していて
大事に大切にされている。

私も翼を愛してる。

表情が乏しいと自分で心配する
翼だが、照れたり、喜んだり
たまにやきもちをやいて拗ねたりと
くるくると表情が変わる。

そんなこと言ってくれるのは
千亜季だけだよ。と翼は言うが
本当のことだから
私はよく言っている。

週末に母の家に
息子の結翔(ゆいと)を
連れて帰省した。

翼はお義父さんと後から来ることに

結翔が、朝から少しぐずり気味で
母から、
「結翔君は熱があるのでは?」
と、言われて熱を測ると38℃過ぎていて
直ぐに母と病院に向かう

車の中から翼に連絡を入れて
「分かり次第知らせるね。」
と、伝えた。

母が連れてきてくれたのは
大きな病院で
小児科の先生も優しい方だった。

「先生、ありがとうございます。」
「大丈夫ですよ。
  直ぐに熱も引きますから」
と、言って貰えて、
母とホッとしていると
「千亜季!!」
と、翼が入ってきて
「翼、着いたの?
ごめんね、びっくりさせて。」
「俺の事は心配ない。
結翔は、大丈夫?」
「うん、先生に見てもらって
楽になったのか、寝ちゃった。」
と、言うと
翼は、ホッとしたのか
結翔を抱いている私事抱き締めた。
「つっ、翼、そと、外」
と、焦る私に構わず
結翔を私からそっと受け取り
片手を私と繋いで診察室を
出ていこうとするから
「先生、本当にありがとうございました。」
と、振り向き頭を下げると
「進藤さん、ご無沙汰しています。」
と、頭を下げる先生に
ん?と、翼を見ると
翼も私の顔を見て
「いやっ、私の知り合いではないよ。」
と、翼に伝えると
先生が笑いながら顔をあげて
「すごい溺愛ぶりですね。」
と、言うと
「あっ、あんたは?」
と、言うから
「知り合い?」
と、私が訊ねると
「ああ、梓の。」
「梓さん?前の奥様の?」
と、私達が話してると
「進藤さん夫婦を離婚へと導いた者です。」
と、先生が言うから
私は、翼の顔と先生の顔を
見比べてしまい
ついつい笑ってしまった。

「すごい偶然だね。」
と、私が翼に言うと
「そうだな。西さんはこちらで医師を?」
「はい。女の子が産まれて
今、二人目が梓のお腹にいます。
あの時、進藤さんに教えて貰わなければ
今の俺達は、ありません。
感謝しています。

奥様には、聞きたくない内容ですね
申し訳ありません。」
と、言うから
「せっ、先生、お気になさらずに。
いろんな事が、偶然にも重なったから
私は、翼と出会う事ができました。
そして息子も授かりました。
先生もどうぞ、お幸せになって
下さい。」
と、言うと先生は嬉しそうに
笑ってくれて
「素晴らしい奥様ですね。
容姿も、ともかく
心も優しい。」
と、西先生が言うと
「俺の自慢の妻です。
俺も感謝してる。
千亜季と出会えて
初めて人の温もりや
自分の自身の幸せを見つける事が
できました。
妻の実家がこちらですので
また、お会いすることもあるかと。」
と、翼が伝えると
「本当だね。先生、その節は
宜しくお願い致します。」
と、千亜季が言い
「進藤さんがベタぼめするのが
わかる気がします。」
と、言われて二人で笑いながら
診察室を後にすると
母とお義父さんが駆け寄り
結翔を母が抱いて
お義父さんと話しながら
会計に向かった。

「うふふっ、世の中狭いね。
でも、ありがとう。
自慢の妻ですって言ってくれて
翼も、私にとって最高の旦那様だよ。」
と、伝えると
翼が、私を抱き締めて
「今夜、覚悟して。
二人目作ろうな。」
と、言うから
真っ赤になる私だった。
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