"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
「座ってもいい?」

俺は頷き、やたらと広い縁側のくせに座っていた位置からお尻一つ分横にずれるとピッチャーを置いた琴音が隣に座る。


「草抜きが終わった時にね、一度声をかけたんだけど気付いてなかったよね?」

「っ!?すいません。気付いてませんでした」

いつだ?と、思い返してみても声をかけられた記憶がない。時間を忘れて作業をしていたくらいだ。声をかけられても気づかなかっただろうが、あまりにも無礼な自分が情けなくて俯く。


「いいの、いいの!ただ、心配で。こんな暑い中、水分補給してないんじゃないか、倒れるんじゃないかって。掃除機の音が止まったから、終わったのかなーって見に来たら倒れてるんだもん。ちょっとびっくりしちゃった」


縁側に寝そべっていた理由は全く別のことだったが、それを言える筈もない。


「ご心配おかけしました」

「以後気をつけるように!」


琴音が身を乗り出して言う。
ほんの少し距離が近くてなっただけなのに思わずドギマギとし、目を泳がせた先の庭が俺の視線の避難所となった。


「気を付けます。………庭、ありがとうございます。スッゲー綺麗になってて、嬉しいです」

「私が勝手にしたことなんだけどね。喜んでくれたならよかった。でも、簡単に不法侵入を許してたらだめよ〜?悪い人だっているんだからね!」

「相沢さん、今も不法侵入ですけど」

「あっ、」

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