"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる

告白は酒井からだった。

とはいえ、彼女は誰とも付き合ったことがなかったし、そうでなくても男として俺がリードしなきゃいけなかった。

けれど、友達から恋人に変わった関係はすぐに受け入れられるわけじゃなかったし、何より、他に好きな人がいる状態で付き合うということにただでさえ引目があるのに、そんな状態で関係を進めていくことを躊躇していた。

酒井の気持ちに応えることができないかもしれない。

友達に戻ることもできず、恋人らしくなることもできずに終わってしまうのかと思っていたけれど、杞憂だった。


別の問題は浮上してきたけれど。

さて、どうするかな。

こうなってしまった元凶は間違いなく俺だが、この先キス一つでこうなってしまうようでは困る。


「酒井」

「….………」

「絵里」


バッと顔を上げ、目をまん丸に見開いた酒井がワナワナと震えながら心臓を押さえる。

顔がどんどん赤くなっていくのが面白い。


「急になんなの!心臓が破れそうなんだけど!」

「嫌だった?」

「嫌じゃない!!けど、急すぎるんだよ」


俺から視線を逸らし、口を尖らせて言った。


「私、あれがファーストキスだったのにびっくりしすぎてそれどころじゃなかったし、今だってさー」

「じゃあ、予め言えば良いってこと?」

「え」

手を伸ばし、頬に触れるとビクッと震えた。

逸らされていた視線を合わせても、彼女は緊張からかキョロキョロと視線の行き場を探している。


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