"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
「一周年記念旅行楽しみ〜」
どうやら隣のカップルは付き合って一年らしい。
俺と酒井が一年を迎えるのは来年の春。
ちょうど就活準備に追われる頃だ。
心置きなく旅行に行けるのは秋の大型連休か、冬休みか、はたまた来年、就活が落ち着いてからか。
そもそも、俺たちは来年も付き合っているのか。
この関係はかなり脆弱なものだ。
俺は他に好きな人がいて、酒井は今は俺のことを好きでいてくれているが、この先もずっとそうである保証はない。
今、別れるという選択肢は微塵もないけれど、この先ずっと付き合っている未来も見えない。
一年後でさえ、わからない。
高校生の時は恋愛は青春の一つで、ずっと続くような期待を持ちながらどこかでこれは一過性だと知っている。
だけど、大学生になってからは恋愛よりも遊びばかりに夢中になっていて、ただでさえ鈍感だと言われがちなのに更に鈍感になっていることは間違いない。
それなのに周りからチラホラと聞こえ始める結婚というワード。
付き合ったら結婚に必ず行き着くわけでもないのに、大学生になると妙な現実感を突きつけられる時がある。
高校生の時に比べて、付き合うことに対して少なからず責任みたいなものがあるような気がしてしまうのは、社会人目前となっているからなのかもしれない。