"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる


本来なら夕方近くまで掛かるはずの課題を脅威の集中力で終わらせてしまった。

こんなことならば二人に待っていてもらっても良かったのかもしれないと思いつつ、家へ帰る。

海を見ればサーファーはいない。
大洋も帰ったのだろう。

……と思っていれば、ちょうど相沢家の前に高級車が止まっていて、そこに彼が乗り込むところだった。

髪を後ろに撫でつけ、黒いスーツに身を包んだ姿は男の俺でも見惚れるくらいにかっこいいと思った。

元のルックスが良すぎるのもあるが、ずっと家にいるのでラフな格好ばかりを目にしていたから、というのもある。

こういう姿を見ると本当にどこかの会社に勤めているのだな、と改めて認識する。

ただ、変なのはラッピングされた向日葵の花束を持っていることと、夏に不似合いの重苦しい黒いスーツだということ。

まるでお葬式にでも行くかのように暗いスーツに反して明るい花。

一体、どこへ行くというのか。

少なくとも会社ではないことと、あの花束が庭の向日葵で作られたものであることだけは分かった。
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