"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる


夕食用のミニトマトを収穫する。

……というのは言い訳で、あの花束が相沢家の庭の向日葵かどうかが気になってしまって庭に出た。

ほんの少し、ちらっと見てすぐに家の中に入るつもりだったのに庭にぽつんと佇む琴音の姿を見つけてしまった。

あれだけ大輪の向日葵が咲いていたのに、花壇の中にあるのはたった一輪だけで、それ以外はさっき大洋が抱えていた花束になったのだと理解した。

ついこの間まで「綺麗だね!」なんて嬉しそうに話していたのに、最後の一輪を見つめる彼女の後ろ姿はどことなく悲しげで、見ないふりをすることはできなかった。

声をかければ「おかえりなさい」と、普段と変わらないにこやかな笑みを見せた。


「さっき、相沢さん……えっと旦那さんが大きな花束を持って行くのを見たんですけど、その花壇のですよね?どうして一輪だけ残してるんですか?」

「この向日葵はねー。種を回収するために残してるの。来年も同じように植えて、花束を渡すために。……私がここにきて三年は経つけど、毎年そうなの」



毎年向日葵の花束を渡す相手がいて、それが目の前にいる彼女でないことに俺は衝撃を受けた。

そして、同時に嫌な想像が頭をよぎる。

もし、想像通りならどうして花言葉の意味を聞いてきたのか、今なら察せられる。

けれど、腑に落ちない。

だって、どう考えたって二人は互いに想いあっていて、向日葵の花束を渡す相手だって琴音以外はありえないはずだ。

他に誰がいるというのか。

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