"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる


あっという間に朝を迎え、電車に揺られつつ大学へ向かう俺と千葉崎。

ふと、財布の中にある無料券のことを思い出した。

「俺のとこの出し物のタダ券、一枚しかないけど千葉崎か彼女かどっちか使わない?」

「俺らはいいや。言ったろ〜?貢献しに行くって。その代わり俺んとこの出し物にも来てもらうけど!」

「言われなくても行くけどさ、これ余ってんだよ。使わないともったいないんだけど」

「酒井がいるじゃ〜ん!」

確かに、当初は千葉崎か酒井のどちらかに渡すつもりだったので、千葉崎が貰ってくれないなら酒井に渡したいところだが。


「文化祭最終日だぞ?ミスコンの結果発表もあるし、待ち合わせしたとしても合流できるか分かんねーだろ」

「だ〜いじょうぶだって!酒井ならきっとワッフル食べにきてくれるからさ!その時に渡せばいいんだよ」

「俺、シフト言ってないんだよ。昨日か一昨日に来てたら今日は来ないかもしれないだろ」

「いやいや、来ますよ?酒井なら来る。何故なら俺がゆ〜君のシフトを教えといてあげたからね!」


これはお礼を言うべきなのか、迷うところだが一応言っておこう。酒井にいうのを忘れていた俺に非がある。

とりあえず、まだこの無料券は財布の中にしまっておくしかない。


「もう一枚は相沢さんに渡しちゃったんだ?」

「そうだよ。何なら、既婚者だって発覚した日に渡したわ。知る前ではあったけどな」

「うわぁ、ご愁傷様です」


手を合わせ拝む千葉崎は無視するとしよう。
< 79 / 259 >

この作品をシェア

pagetop