"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる

カードや鍵は入れ物に入れるわけでもなく、ポケットに入れるだけ。初対面の人にも警戒心皆無。重いものを無理して持つ。

やましいことはなにもないとは言え、多少の躊躇だけでノコノコと男の家の庭に入ってしまう無用心さ。

なんというか、いろんな面で心配である。


「まぁ、何はともあれ。気持ちが浅いうちに発覚して良かったじゃん。深入りしてたら地獄だぞ〜。この芸能人みたいにな」

ピッピッとチャンネルが切り替わり、ニュース番組に変わる。最近話題の芸能人の不倫問題だった。

やはり、こういうものを見ると嫌悪感がある。


「この際、彼女作っちゃえば?」

簡単に言ってくれる。俺はお前みたいにはモテないんだよ。

ジロっと千葉崎に視線を送る。

「そんな簡単にできるかよ」

「できるって!ゆ〜君が俺と酒井、もしくは男子連中とつるみすぎなんだよ!もっと世界を広く!広〜くみてみなよ!相沢さんより美人はもっと沢山いるさ!」

「………そうだな」

琴音程の美人に会ったのがそもそも初めてなので、それ以上の美人に出会える確率は低いだろうが、美人か美人でないかはどうでもいい。

自分にとって心惹かれる存在かそうでないかだ。

そうなれば、目を向ければ意外と沢山いるのかもしれない。

「ま!ゆ〜君が俺らのこと大好きなのは満更でもないんだけどね!」

「おい。いつ俺が大好きって言ったよ。気付いたらつるんでただけだ」

「それが言ってるんだって〜」

ニヤニヤと気持ち悪い笑みで指を差してくる。
腹立たしい。


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