美術室のユーレイ
「美斗くん…。ううん、あなたは誰?」
水を打ったように静まり返る。
その間も私は彼の目を見つめる。
私の呼吸の音だけが耳につく。
彼はしばらく固まっていたけれど、やがて笑顔を見せた。
でもその頬はひきつり、目は虚ろでろくに笑えていなかった。
「な、何言ってんだよ舞空。俺は美斗だよ。川村美斗」
「嘘つかないで!」
誤魔化されまいと威勢を張る。
すると、彼の顔から笑顔がなくなり、みるみるうちに焦り出す。
私は彼に歩み寄って彼との距離を詰める。
「あなたは川村美斗でもコンクールで賞を取った人間でもない!まったく別の誰かなんでしょ!?」
私がそう言うと、やがて焦りも消え、目は色をなくし、黙って下を向いてしまった。