溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を





 徹夜明けだった事もあり、風香はそのまま眠ってしまっていた。起きたときには、終点の駅に着くところだった。
 風香は恐る恐る握りしめていたスマホの画面を見るが、そこには何の通知も来ていなかった。

 昨日の夜から何も食べていなかった風香は、電車に乗り換え、コンビニで買ったおにぎりを噛りながら、ローカル線の電車に揺られてホテルへと向かった。その電車でもウトウトしてしまい、目を覚ましたのは目の前の窓からは夕焼けに染まった海が見えた頃だった。


 「綺麗………」


 柊とのデートの時も、この夕暮れを手を繋いで砂浜を歩きながら見たなと思い出した。海風が冷たくて体を震わせてしまうとそれに気づいた柊がジャケットを貸してくれたのだ。そこからは彼の香りがして、抱きしめられているような感覚になり、ドキドキと胸が高鳴ってしまっのを今でもしっかりと記憶に残っている。


 「寒い………」


 長袖のワンピースを着た体を自分の腕で抱きしめる。やはり夕方になるとまだまだ寒いのが4月だ。風香はバックからニットのカーディガンを取り出して羽織った。




 ホテルに到着する頃にはすっかり日が落ちていた。
 部屋に着くと大きなベットと月の光りで水辺が白く光る海が出迎えてくれた。風香は、部屋の電気をつけるのが勿体なくなり、荷物を置いてから窓辺のソファに置いて、海を眺めた。




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