溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を



 また会える日を決めようねと話をして電話を切る。
 と、タイミングよく玄関のチャイムが鳴った。
 もしかして輝ではないかと思い、体がビクッ震えてしまう。恐る恐る、玄関のモニターを見つめる。すると、そこには茶色の髪ではなく、大好きな彼の顔があった。柊がカメラに向かってニコやかに手を振っている。その姿を見てホッとしてしまう。

 風香は急いで玄関に向かい、ドアを開けた。
 


 「柊さん………え、その格好は?」
 「風香ちゃん。今からデートに行きませんか?」
 

 モニターではわからなかったが、柊はいつものスーツではなくスマートカジュアルなスーツを着ていた。グレーのジャケットに白シャツ、そして黒いネクタイ。ストレートの黒ズボン。胸にはチェックのポケットチーフが飾られており、おしゃれに着こなしていた。前髪も少し上げており、少し垂れた前髪が色気を感じさせた。そんな姿の柊を見て、風香は胸が高鳴った。


 「デート………?どうして、急に………」
 「明日は何の日か忘れた?」


 風香はその言葉を聞いてハッとした。
 少し前も忘れてしまっていた事。
 日々想定外の事が起こっていて、また忘れてしまっていた。


 「………私の誕生日………」
 「そう、正解。もしかして、また忘れてた?」
 「うん………」
 「じゃあ、まず1つ目のプレゼント」


 柊は微笑むと、持っていた大きな紙袋を風香に手渡した。
 風香は「ありがとう」と受け取ったけれど、それが何かわからず、中身を覗く。すると、そこには洋服と靴、バックが入っていた。




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