溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
26話「傍に居て」





   26話「傍に居て」



   ★★★



 ため息をつくと幸せが逃げる。
 だからだろうか、柊は最近風香との時間がとれていなかった。せっかく同棲を始めようとしていたのに、最後の荷物を運び終わる前に、仕事が忙しくなった。
 せっかく風香とも一緒に暮らせるようになったのに、朝早く夜遅い生活になっており、彼女とゆっくりする時間もとれなかった。
 そんな自分に合わせるように、風香は早く起きて朝食や弁当を準備してくれたり、帰ってくるのを待っていてくれた。

 そうでなかったら、寝ている彼女にしか会えていなかったな。柊はそう感じていた。

 今日はいつもより少しだけ早く仕事を終える事が出来た。夜遅くまでやっているケーキ屋を見つけ、そこで彼女が好きそうなものを数個選び、急いで帰宅した。
 きっと笑顔で嬉しそうに受け取ってくれるだろう。そう考えると、柊も自然に微笑んでしまう。
 もう彼女がいない生活など考えられないな。と、強く思っていた。

 浮わついた気持ちで自宅のドアを開ける。が、その瞬間に異変にすぐ気づいた。
 部屋の電気がついていないのだ。一人で暮らして居た時のように真っ暗な部屋が柊を出迎えた。


 「………風香?」


 嫌な予感がした。
 警察官をしているからだろうか。こういう悪い勘は日頃からよく当たる。柊は急いで靴を脱ぎ捨て、部屋の照明をつけて廊下を駆けた。



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