溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を



 もう寝てしまっているのだろうか。
 それとも自分の家で仕事に没頭しているのか。彼女は集中してしまうと周りが見えなくなってしまう事もあるからそうであるかもしれない。
 そう考えながらも、柊はそうではい。と、気づいていた。

 寝てしまっているとしても、部屋が真っ暗な事はないだろう。そして、自宅で仕事をしているならば、連絡ぐらいくるはずだ。それに、部屋を荒らされたばかりなのだ。夜遅くに一人になることは彼女は避けていたはずだ。


 「………っっ!」


 柊は、寝室、風香の個室、柊の書斎、風呂場、トイレ……玄関から近い場所から室内を確認した。けれど、そこには彼女の姿はなかった。
 残っていのは、リビングとキッチン。
 柊はすぐに電気をつけた。

 キッチンには、エプロン姿の彼女はおらず使っていたエプロンは綺麗に畳んで置かれていた。そして、夕食がラップをされてテーブルに並んでいる。
 視線をリビングの方に向ける。けれど、ソファに座る彼女の姿はない。けれど、ソファに上半身を乗せて、苦しそうに目を閉じる風香の姿が目に飛び込んで来た。


 「風香ちゃんっっ!?」




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