溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を




 彼女に何かあったらと思うと、強く抱きしめた腕を緩める事も、気持ちのいい感触の唇に触れる事など出来なかった。
 突然のキスに風香は驚いた様子だったけれど、すぐに受け入れてくれる。
 先程倒れてしまったのに、こうやって体を求めるなんて間違っている事は柊もわかっていた。
 けれど、わかっていても止められない事だってあるのだ。
 

 「………っ……ぁ……柊さん………?」


 長いキスが続き、やっとの事で唇を離すと、風香は大きく息を吸いながら、とろんとした瞳で柊を見つめていた。
 その視線だけでも柊は体が一気に熱くなる。


 「こんな時にごめん………でも、君が傍に居るって感じたいんだ。許してくれるかな?」


 柊の思いを素直に伝えた。
 彼女がいなくなってしまったら、俺はどうなるのだろうか。そう考えると不安で仕方がないのだ。
 だからこそ、彼女を今すぐに感じたいのだ。
 君が自分の傍に居てくれる事を。


 彼女は何故柊がそんな事を言い出したのか、理由などわからないだろう。
 きっと、倒れた事で柊が心配をしたと思っているはずだ。

 けれど、風香はそんな女々しい柊を笑う事もバカにする事もやく、優しく微笑んだ。柊の好きな笑顔だ。


 「私はここに居るよ。どこにも行かない」
 「………うん………そうだよな」


 柊は苦笑しながら、風香の頬に手を添えた。 そんな柊を見て、風香も同じような笑顔になる。それがとても切なくて、柊はそのまま彼女をソファに押し倒した。


 「好きだよ……風香」
 「私も好き………」
 「…………」


 また、「ごめん」という言葉が口から出てしまいそうになり、柊はその言葉を飲み込み、彼女の首筋にキスを落としていく。
 風香の体が短く震え、甘い声が洩れる。

 もうそれを感じてしまうと止めることなど出来ない。
 柊は狭いソファの上で、彼女のぬくもりを感じ、安心出来るまで風香を欲したのだった。




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