溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を




 「こんな物、よく見つけたね。けど………俺はわからないな」
 「え………」
 「見たこともない。この段ボールには何が入ってるの?………んー、女物の洋服とか小物か………じゃあ、これは風香ちゃんの私物なんじゃない。引っ越しで持ってきたんじゃないのかな?」


 柊の言葉はどれも普通なはずだった。
 彼は本当に知らないのかもしれない。そんな言葉ばかりだった。
 けれど、ずっと一緒に居た風香ならわかる。
 彼の顔が辛そうになっている事に。


 「ねぇ、柊さん………どうしてそんな事を言うの?知っている事があるなら教えて?」
 「風香ちゃんこそ、どうしたの?俺は何も知らないんだ。………風香ちゃんこそ、この箱の事を知っているなら教えてくれないかな」
 「…………知ってるよ………私がずっと柊を好きだったって事だよ」
 「それはどういう意味?」


 名前の呼び方を変えても、気持ちを伝えても、彼は何も話そうとしてくれない。
 ただただ自分だけが傷ついた顔をしているのだ。

 ダメなんだ。
 風香はそう思って、体と心から力が抜けていくのを感じた。
 



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