溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
「それで、風香ちゃんの話は?何かあった?」
「あ、………それは………」
風香は先程見つけた段ボール箱に入った風香の私物について、彼に聞こうと思っていた。
けれど、今は仕事を泊まり込みになるほどに緊迫した状態なのかもしれない。それなのに、そんな事を話していいのか。風香は躊躇ってしまった。落ち着いてからゆっくり話せばいいのではないか。
先伸ばしにしないと決めていたのに、また逃げそうになってしまう。
「忙しそうだから、またゆっくり話し出来る時に話しを聞いて………」
「今、聞かせて。前も言っただろ?何でも俺に言って欲しいって……」
そう言って風香に近づいた柊は、風香の目にそっと触れた。先ほど泣いてしまったので、目が赤くなっているのに柊が気づいたのかもしれない。風香も彼の変化に敏感だけれど、彼も同じようだ。
風香は彼の気遣いに感謝しつつも、少しの迷いを感じながら、「じゃあ………」と話しをする事にした。
「あの………寝室で見てほしいものがあるの」
「うん?」
風香の話しというのが全く検討もつかないようで、柊は不思議のそうな顔をしながら風香の跡についてきた。
「実は……柊のクローゼットを見ていたら、奥からこれを見つけてしまって」
「……………」
寝室に入ると、風香が元に戻すが出来なかった大きな板と段ボールが床に置いてあった。
風香がそれを見ながら説明する。
と、柊は無表情のままそれらを見つめていた。
「これ………何かわかる?柊は………これの事知ってる?」
風香は彼の表情を伺いながら、恐る恐る彼に問いかけた。
その答えをずっと聞きたかった。
彼がどんな答えを話してくれるのか。
柊はただただ視線を床に置かれた段ボールを見つめた後。
フッと気持ちがない乾いた笑みを浮かべた。