溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を



 そんなある日、風香を狙う計画が実行されそうだというのが柊達警察にリークされた。
 そのため、柊は風香に美鈴の事を話すことにした。逮捕される前に風香を守るため。そして、少しでもショックを少なくするために。

 柊はいつもより早く帰宅をすると、婚約したばかりの風香は、「おかえりなさい!早いなんて、嬉しい!」と、笑顔で出迎えくれた。けれど、その笑みも自分が話す事実を伝えてしまえば、一気に暗いものになるのだろう。
 そんな風に思うと、柊は何も言えなくなってしまった。



 「柊………?何かあったの?」


 抱き返してもこない、「ただいま」と言葉を返さない柊を見て、風香は不思議に思ったのか顔を見上げた。そこにあった、思いつめた柊の表情を見て、風香も何か感じ取ったようだった。


 「風香に大切な話があるんだ」


 張りつめた雰囲気を感じ、風香もすぐに真剣な表情になり、「うん」と頷いてくれた。
 夕食の準備をしていた風香は、それを一旦止めて、2人でリビングのソファに座った。そこには2人の思い出の写真や旅行のお土産が飾ってある。柊と風香にとっては宝物といえる場所だった。




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