溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
38話「代償」





   38話「代償」




 「おまえ達は何を考えているんだっ!!この大バカ者がっ!!」
 「っっ」
 「………すみませんでした」


 取調室に大きな声が響く。
 きっと廊下を歩いている人は驚いているだろう。風香は思いきり体を震わせながら、頭を下げて「すみません」と目の前の相手を見た。
 そこには、柊の上司である滝川が腕を組ながら、眉をひそめ、また大きな口を開いては、ガミガミとお説教を始めた。


 事件が発生した次の日の夕方。
 柊の風香は事情聴取という名のお説教を受けていた。加害者ではなく被害者であるはずだが、滝川は大層ご立腹であり、風香を睨んでいた。元々迫力がある人だけに、風香はビクビクしまう。


 「裏社会の薬取引して、しかもメモリーロスまで飲んでしまうなんて、何を考えているんだ!今回は捜査の一環として処理するが、本当ならば犯罪として捕まってるところだぞっ!」
 「申し訳ございません」
 「それにあのメモリーロスには基準量より多めに入っていた事がわかった。そんなものを服用したら、どんな副作用があるかわからないんだぞ?今回はたまたま倒れたり頭痛だけでおさまっていたからいいものの………どうなるか、わからないんだからな!」
 「もう絶対に手を出しません」
 「当たり前だっっ!」
 「………はい」




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