溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
6話「助言」





   6話「助言」




 「お待たせしましたー!風香さん、お久しぶりですね」
 「和臣さん。いつも連絡ありがとうございます」


 旅行先から警察署に向かい、到着するとすぐに取調室に案内された。いつもの事なので驚きはしなかったけれど、柊が行方不明になった後に相談しに行った時に初めて案内された時は驚いたものだった。
 明るい声で入室してきた男性を見て、風香は椅子から立ち上がって頭を下げる。男は「よかったですね!とりあえずは、見つかって!」と、明るくそう言ってくれた。

 彼は朝霧和臣(あさぎりかずおみ)。
 立ち上がった風香より少し高いぐらいの身長の和臣は、柊より2歳年下の29歳だった。風香よりも年上だったけれど、気さくな性格で、同級生や年下のような雰囲気を感じていた。
 大人っぽい色気のある柊とは違った顔の整い方をしており、言い方が悪いが少し派手目な見た目をしていた。大きな瞳と茶色の地毛がそうさせるようだった。


 「相変わらず風香さんは美人ですねー!柊さんが忘れてしまったなら俺と婚約しませんか?」
 「和臣さん………。私、一応ショック受けてるんですけど!」
 「はははー、俺は本気なんですけど………でも、そうですよね。すみません」


 この軽いノリも、彼を派手だと思ってしまう要因の1つだと風香は思っていた。普通ならショックを受ける言葉でも、彼が楽しげに言うと「冗談だ」と思ってしまったり、笑わせてくれようとしているのかなと感じたりするから不思議だ。
 昔、柊が和臣を風香に紹介してくれた際は「こういうチャラい男が一人は居た方が、暴力団とか不良少年と話し聞きやすいからな」と言っており、和臣は「囮捜査ですか!?」と声を上げて反抗していたのを思い出してしまう。



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