溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を




 次の日。
 風香は待ち合わせの駅に向かいながら、デートで気をつけなければいけない事を考えていた。
 まずは、自分の婚約者であった事。もちろん、柊とそっくりさんが実はあなたでした、と言うのも伝えられない。
 それとメモリーロスの事も聞かれたくない話かもしれないので、なるべく話さないようにしようと思った。


 そう思いながらも、風香は心の中で彼に思い出して欲しいと思っているのだと、感じてしまっていた。
 気づくと柊が「可愛い」と褒めてくれたワンピースを着たり、プレゼントしてもらったバックなどを身につけて来てしまった。
 顔を見ても覚えていないのだから、バックなどを見ても思い出してくれるはずはないとわかっている。
 けれど、何かのきっかけになるかもしれない。そう思ってしまうのだった。








 「ごめんなさい。お待たせしました」
 「いえ。俺も先ほどついたばかりなので大丈夫ですよ。……お久しぶりですね、風香さん」
 「えぇ……あれから1週間ぐらいしか経ってないのも不思議な気持ちですが」
 「確かにそうですね」


 待ち合わせ時間より10分ほど早く向かったが、すでに柊の姿はあった。
 細身のズボンに、白いシャツ、そしてゆったりしたジャケットを着ていた。着こなし方も上手であるし、顔が整い身長も高いので、待ち合わせ場所でも目立っていた。



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