溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を



 「花って、持ち主の悲しい事とか辛いことを吸いとってくれるんだって。風香ちゃん、知ってた?」
 「ううん………元気にしてくれるとは思ってたけど、それは吸いとってくれてるから………」
 「そうらしいよ。悲しいことばかりを吸ってると花も元気がなくなってしまうんだ。」
 「そんな………」
 「花束だと、短い間しか風香ちゃんの傍にいれないから、鉢植えにしたんだ。そうすれば、元気にしてもらえるかなって。そして、俺と会ったら必ず笑顔にするから……」
 「柊さん………」
 「そしたら、花も元気になるでしょ?」

 
 柊はそう言って、風香の顔を覗き込む。
 そして、彼の男らしくもほっそりとした指で風香の頬に触れた。
 彼に肌を触れられるのが久しぶりで、風香は体が熱くなるのを感じる。そして、彼に触れたいと思ってしまう自分がいた。
 体が熱くなったせいか、風香の瞳は涙ぐんでしまう。けれど、それを隠さずに彼の視線に合わせる。柊の事を見ていたいから。

 すると、彼の喉がゴクンっと動くのがわかった。それさえも色っぽく感じてしまう。
 ゆっくりと近づいてくる彼を見つめ続け、そして「柊さん……」と自然の名前を呼んでしまう。

 「俺は君に惹かれてる。出会った時からずっと………君にはもうバレてしまっていると思うけど………風香ちゃんが好きだよ」




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