溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を



 柊と再度付き合い初めてからしばらく間が空き、この日はやっとの事で2人の時間が1日取れたのだった。
 朝から夜まで彼と一緒に居れるとなると、やはり気分が上がってしまい、風香は数日前からずっと楽しみにしていた。

 
 朝から街中を歩き、映画を見ながら午前中を過ごした。彼が好きな舞台が映画になったもので、きっと見たいだろうなと思い、風香がそれを選ぶと「俺、それ見たかったんだ」と、とても嬉しそうにしてくれていた。柊は学生時代は演劇部に入っていた事もあり、舞台やミュージカルが好きだったのだ。それは今でも変わらないようだった。

 映画の感想を話し合いながら近くのカフェ店でパンやコーヒーをテイクアウトすると、大きな公園で昼食にした。
 事前に柊から「風香ちゃんが絵を描いてるところ見たい」と言われていたので、スケッチブックと鉛筆を持ってきていた。
 風香は、少し前に趣味で描いていた途中の絵の続きを描き始める。彼の視線をくすぐったかったけれど、開放的な屋外で絵を描くのはとても気持ちよかった。
 今回も、想像の風景画を描いていた。
 途中からは夢中になってしまい、視線にも気にならなくなった。それに、柊は何も言わずにニコニコと見てくれているだけだったので、集中出来たのだろう。

 しばらくしてから、風香が1度手を止めると、「ありがとう」と言って、柊は風香の絵を覗き込んだ。




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