溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を



 「ごめんね………途中から集中しすぎちゃって」
 「いいんだよ。真剣な風香ちゃん、かっこよかったから。そんな姿見たくてお願いしたんだしね」
 「え…………絵を見たかったんじゃないの?」


 柊の言葉に驚き、一気に恥ずかしくなる。
 てっきり彼はペンの動きや絵を見ているのだとばかり思っていたのだ。
 風香は、顔を真っ赤にして彼を方を見てしまう。すると、クククッと楽しそうに笑い声を上げて、「風香ちゃんは可愛いね」と、何故か上機嫌で頭を撫でてくれる。


 「風香ちゃんの頭の中はどうなってるんだろうね………こんなすごい世界を想像できるなんて………この場所に行ってみたいよ」


 空中庭園である小さな島々が描かれた風景画。島々には大きな川があり、それが無限に溢れ、そして下へと落ちていく。色鮮やかな鳥達が島で休憩をしたり、見たこともない花達も咲いている。楽園のようなそんな場所。見てくれている柊が行ってみたいと思ってくれるのはとても嬉しかった。


 「それにこんなに細い指が、丁寧に動いて描いていくんだね………本当にすごいよ」
 「そんな………私は、ずっと昔から描いてるから慣れているだけだよ?」
 「そんな事ないよ。こうやって、絵を描いて生きていけるんだ。そして、君の絵をみながらゲームをして楽しんだり感動したりする人がいるなんて、すごいなって思うよ」


 風香の手を優しく持ち上げた柊は、手を繋ぐように握りしめてくれる。
 彼の体温がとても心地よくて、風香はもっと手を握っていて欲しいなと思ってしまう。その気持ちの表れなのか、自然の彼の手を握りしめてしまった。


 「………お昼を食べ終わったら、少し街を歩いて買い物でもしようか?」
 「うん」
 「もちろん、手を繋いで、ね」
 

 風香の気持ちが伝わったのか、ニッコリと微笑みながら風香の気持ちを確かめるように聞いてくる柊。もちろん、「うん!」と、とびきりの笑顔で返事をしたのだった。




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