溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を
13話「鍵」
13話「鍵」
人は本当に恐怖を感じると動けなくなってしまうのだなと風香は思った。
部屋の中は照明がついておらず、真っ暗だった。廊下の電気の明かりで、廊下の途中までは何とか見えるが、そこは無惨なまでに荒れ果てていた。玄関はシューズボックスに片付けていた靴が散乱しており、廊下には食器なども落ちていた。
「…………どうして、こんな事が………」
玄関に手を伸ばし電気を着けようとしたが、まだ誰かがいたら。
そう思うと体に寒気か走り、手を戻した。
風香は、震える手でバックからスマホを取り出した。電話をかけたのは、もちろん柊だった。大好きな人に助けて貰いたい。傍にいて欲しい。そう思い、すがる思いで柊へと電話をした。
何回かコール音が響いた。
けれど、柊が電話に出てくれる様子はなかった。
風香はますます震えが止まらなくなり、呼吸も荒くなってきてしまった。心の中では「どうしようどうしよう………」と、不安な気持ちが溢れかえっている。
何回か柊に電話をしたけれど、電話に出てくれる事はなかった。
風香は次に110番をし警察を呼んだ。大家にも連絡をし、そして柊の後輩でもある和臣にも一報を入れた。