溺愛婚約者と秘密の約束と甘い媚薬を




 「あと1つだけ………」


 風香はカーテンが閉まったままの窓辺に近づいた。

 「よかった………無事だった」
 「風香ちゃん?」
 「あ、お待たせ。あの………これも持っていきたいな」
 「それ………俺がプレゼントした花」

 
 風香は柊から貰ったアスターステラホワイトの鉢植えを大切に持って彼に近づいた。小さな白い花が咲いており、見ているだけで風香の心を癒してくれる。


 「こんなにぐじゃぐじゃになった部屋なのに、この花は奇跡的に無事でよかった……」
 「大切に育ててくれてたんだね。花がとても元気そうだ」
 「もちろん!すっかりお気に入りだから」
 「そっか」


 こんなにも荒れてしまった場所にいても、花を見ると、心が落ち着く。
 それに、この花が無事だったことが、何よりも嬉しかった。

 緊張感を持って部屋に入った2人だったが、部屋を出る時は、穏やかな表情へと変わっていたのだった。
 
 
 
 
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