もう一度だけ、キミに逢いたい。

その言葉を否定したくても、ゆりちゃんのことを想えばそんなこと、できるはずがなかった。


だって、聞いてしまったから。


ゆりちゃんが病院に入院していたころ、ゆりちゃんの世話を笑顔でしていた看護師の人達が、裏ではゆりちゃんのことを悪く言っていたことを。




……きっと、ゆりちゃんもこのことを知っていたのだろう。


それに、その看護師達の人に関わらず、ゆりちゃんの事情を知る人達はみな、ゆりちゃんを“悪魔の子”だと言って罵っていた。


……それは、私の両親も例外ではない。




私はもう一度、ベッドで眠るゆりちゃんに目を移す。


相変わらず少し苦しそうな顔をしているのが分かる。


“ゆりちゃんは、いらない存在なんかじゃないよっ…。ゆりちゃんは私にとって、誰よりもそばにいてほしい存在なんだからっ…”


そういう意味を込めて、伊織くんが握っていない方の手をギュッと握った。


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