16歳、きみと一生に一度の恋をする。


そして昼休み。私は購買に向かうために教室を出た。

購買部は食堂ロビーの一角にある。毎日手作りパンを売りにきているおじさんの周りにも生徒たちが並んでいるけれど食堂ほどじゃない。

食堂の座席数はおよそ160席。メニューは約90種類と豊富で麺類や丼物、揚げ物もあると聞く。

食堂に入りたい生徒たちが押し合うようにロビーにまで列を作っていて、まるで戦場のような熱気を帯びている。

私も美味しいと噂されている日替わりランチが食べたいと思う時もあるけれど、こういう現場を見てしまうとパンでいいやと諦めてしまう。

結局、私が買ったのはいつもの八十円のメープルパンだった。


「藤枝、クラスにいなかったわ」

「見つけたらこの前やられた礼をたっぷりしてやる」

自動販売機が数台並んでいる通路で、三年生が鼻息を荒くしていた。それはスーパーの駐輪場で自転車を倒していた人たちであり、晃と喧嘩をして負けた三年生だった。

……しつこい人たち。

そんなに晃のことを追い回すほど暇なら、違うことをすればいいのに。

三年生は荒ぶっていることを見せつけたいのか、通路を歩いているだけの生徒にも大声で威嚇していた。

そんな中で、ある女子生徒が運悪く声をかけられてしまっていた。

「なあ、お前一年でしょ? 藤枝のこと呼んできてくれない?」

「……え?」

それは富山さんだった。

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