人格矯正メロディ
『離して!』


大きな声でそう叫ぶことができれば、コンビニの店員さんが助けにきてくれたかもしれない。


だけど、そんな風に声をあげることができる人間ばかりじゃない。


あたしはいつも肝心な時に勇気がでなくて、伝えたいことが口から出てこなくなっていた。


「お金ないじゃ困るんだよね。あたしらの遊び金なんだからさぁ」


コンビニ裏に連れて行かれ、そのまま鞄を取り上げられてしまった。


蓋をあけて逆さにし乱暴に中の物を出される。


その中に入っていたのは薄茶色の封筒だった。


「お、いいのあんじゃん!」


取り巻きの1人がすぐにそれを拾い上げて中を確認した。


「それはっ……!!」


あたしは全身の血の気が退いていくのを感じた。


それは習っているバイオリンの毎月の月謝だった。


封筒の中に5000円が入れられている。


「なんだ、たったの5000円かよ」


チッと舌打ちをしながらも、そのお札を自分のポケットにねじ込んでいく。


「げ、月謝だから……!」


必死に喉の奥から声を振り絞ってみたけれど、相手には聞こえていなかった。
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