人格矯正メロディ
いや、こんな至近距離だから聞こえていたんだろう。


あたしがどれだけ小さな声を振り絞ってみても、相手にとっては返事をする必要のないもの同然なのだ。


「財布も持ってんだろ?」


リーダー格の女があたしの制服に手を伸ばそうとした……その時だった。


「あれ、アケミじゃん」


男性の声がして顔を上げると、そこには長身の男性が立っていた。


筋肉質なのか薄いTシャツの奥から筋肉がもりあがっているのがわかった。


「海! どうしたの、こんなところで!」


途端にリーダーの女が猫なで声になる。


男性の顔をよく確認してみると、野性的で、でも整った顔立ちをしているのがわかった。


リーダー以外の女子たちも一斉に声色を変えて男に媚びはじめる。


その隙にあたしはしゃがみ込み、散乱した教科書やノートを鞄に詰め込み始めた。


月謝を取られてしまったのは諦めよう。


あたしにそれを取り戻せるような勇気なはい。
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