人格矯正メロディ
それなのに、香澄がそのお菓子を一つ持ってあたしの席までやってきたのだ。


香澄が自分から動くなんて珍しいことだった。


いつもはとりまきたちが香澄の席に近づいて行くし、欲しいものがあっても買ってこされるのが常だった。


「あげるよ」


香澄は満面の笑みを浮かべてそう言った。


しかしその笑みは歪み、優越感に満ちたものだった。


きっと、あたしには買うことのできない品物だからだろう。


あたしはすぐに手を伸ばすことができなかった。


香澄は口は優しいが態度は最低だ。


わざと見下しているとわかるように態度で示してくる。


それが胸に引っかかり、手を伸ばすことができなかった。


「なにしてんの? さっさととれよ」


いつの間にか香澄の横に立っていたナツコが声をかけてくる。


威圧的な声色でそう言われると、あたしの緊張感は更に高まって動けなくなってしまう。


他のクラスメートたちに助けを求めて視線を送るが、誰もあたしのことなんて気にしていなかった。
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