不器用オオカミとひみつの同居生活。
私が追いつく頃には、もう下を向いて足を止めていた。
「げほっ、はあ、はぁ……こっちゃん、」
私、もしかしなくても体力なさすぎ?
こっちゃんはすこしも息を乱してなくて、私の呼吸が整うのを待ってくれているようでもあった。
深呼吸をして無理やり心臓を落ち着ける。
「……私のせいで傷つけちゃって、本当にごめんなさい」
こっちゃんの後ろ姿がピクリと動いた。
「あたしをこれ以上惨めにして、楽しい?同情なんか求めてない」
「同情なんかじゃない。……たしかに私は、こっちゃんを傷つけないために黙ってたの。それがこっちゃんの心を傷つけてたなんて気付かずに」
少し考えたらわかることなのに、私は楽観的すぎたんだ。
学校では他人のふりをしていれば、それで赤の他人なんだって。
心のどこかでそう決めつけていた。
その中途半端な気持ちが、鋭利なナイフとなってこっちゃんの胸に突き刺さった。
頬に強烈な平手打ちを浴びて、私たち以外誰もいない廊下にその音は大きく響いた。
あたまが揺れて、額の傷がずきずきと痛む。