不器用オオカミとひみつの同居生活。
「よっ、風邪治ったの?」
「周くん」
すうちゃんと話していた私の頭にぽんと手を置いたのは、同じクラスの加瀬沢周くん。
「うん、もう治ったよ。ありがとう」
「そっか、よかった!なんか俺、一日に一回は茅森ちゃんと話さないと落ち着かないんだよな」
人なつっこい笑顔が惜しみなく向けられて、私も自然と顔が和らいでいくのを感じた。
「ふふ、なにそれ」
「ほら、朝にお天気お姉さん見ないと一日はじまった気にならねーじゃん?それと同じ」
「私ってお天気お姉さんなの?」
「俺の中ではお姉さんより重要だけどね。
な、蘆田!」
「すうに振られても困るんですけど」
「あいかわらず辛辣だなぁ」
「ふん、よけいなお世話よ」
周くんと話していると、つられて笑顔になってしまう。
それはすうちゃんも同じなようで、辛辣と言われても怒る真似をするだけだった。
さっきまで頭の中を占めていた悩みごとがすっと吹き飛んでいくような感じ。
周くんの笑顔にはそんな力があった。
だから周くんは、他学科から『普通科の太陽神』と呼ばれている。