前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
 先生には事実を打ち明けよう。もう隠す必要はない。


「……私、ずっと男性が怖かったんです。事故に遭う直前、先輩だった人に……襲われそうになって。入院中、学校に行きたくなかったのはそのせいもありました」


 途中で言葉を詰まらせつつ初めて告白すると、先生の表情が明らかに強張った。珍しくささやかな怒りを含んでいる気がする。

 彼を宥めるように、私は明るい表情と声で続ける。


「でも、明神先生のおかげで立ち直ることができたんです。屋上で話したあの日から、先生だけは他の誰とも違う存在になっていました」


 こんなふうに想いを口にしたことはないから、かなり緊張する。けど、伝えなくちゃ。


「今はちょっと心の準備ができていなかっただけで、手を繋ぐのも頭を撫でられるのも嫌じゃないんです。私だって、先生と……」


〝普通の恋人や夫婦と同じように愛し合いたいです〟

 そう言いたいのに、やっぱり喉で詰まってしまう。肝心なところで言葉にできなくなるのは、体育館倉庫で助けを求めようとしたとき、先輩に威圧されて脅威を感じた影響が大きいのかもしれない。
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