前略、結婚してください~過保護な外科医にいきなりお嫁入り~
 重い口調で語る彼は、伊吹の事情を少なからず知っているように見える。


「君は知っているのか、彼女が悩んでいる理由を」
「詳しくはわかりませんが、あなたが関わっていることは確かでしょう」


 わずかに怒気を滲ませた声が投げられ、ズキリと胸が痛む。

 大地くんの言う通りだ。俺のもとから離れるくらいなのだから、当然無関係ではないだろう。彼女の異変に気づけなかったどころか、自分が原因のひとつかもしれないと思うと不甲斐なさで一杯になる。

 やりきれず伏し目がちになるも、大地くんはこう続ける。


「姉ちゃんはきっと自分から説明しますよ。……話せるときさえ来れば」


 つけ足されたひとことがやけに暗然としているように聞こえ、なんとなく引っかかって俺は目線を上げた。しかし、彼は厳しい表情になってぴしゃりと放つ。


「とにかく、姉ちゃんはしばらく帰らせません。お引き取りください」


 俺が引き止める間すら与えられず、ドアは閉められてしまった。

 深いため息を吐き出し、伊吹の部屋の窓を見上げる。すぐそこにいるはずなのに、今は彼女がものすごく遠い。頼られず、強引に連れ去ることもできない自分が心底嫌になった。
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