恋人のフリはもう嫌です

 西山さんは、松本機器の説明を受け加えた。

「松本機器の会社自体は縮小化していて、社長と数人の社員にパートでやりくりしているみたいだ」

「どこも勝てない素晴らしい会社なのに、ですか?」

「どんな会社も、生き残るのは厳しいよね」

 目的地に着いたようで、西山さんは車を駐車場に入れた。
 隣に自宅がある自宅兼作業場のような造りの会社は、外観からも小規模なのがわかった。

「本命はここで買いたいし、キタガワとしては今後にも繋げたい」

「今後、ですか」

「それは追い追い。千穂ちゃんはなにか聞かれたら、松本機器から買いたいという熱意さえ伝えてくれれば」

 今から本命の会社に行くのに、追い追いでいいのか一抹の不安を覚えながらも、打ち合わせの時間になってしまうため、話を切り上げた。
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